木曜日の5限、学生たちは楽しみにしている。ゲスト講師の先生が各地からやってきて現場のお話をしてくれるのだ。ぼくらの大学時代にもこんな授業があったらなあと、ちょっと悔しく思う。

 この日はYさんのお話。Yさんは、これまで情緒障害児や言語障害児の通級指導を東京やH県でなさってきた。今年度からは、通常学級の担任となる。

                       ※

 大教室の演台の前に立ち、学生たちにやさしく語りかける。背筋の伸びた美しい姿勢…。こんなお話から始まった。以下は私の簡単な要約です。

 「私が最初に始めた仕事は情緒障害児の通級学級でした。毎週一度だけ教室に子どもたちがやってきます。曜日によって子どもたちは違うのです。だから、私にとって子どもとの出会いは、その一瞬がとても大切な時間です。意味なく過ごしてしまったら、今度その子と出会うのは一週間後となってしまいます。貴重な出会いの時間をなくしたくない。とても大切にしたいと思いました」

 「言語障害児の指導と言えば、すぐ言葉の発声法や口の形を指示するとかしがちです。でも私は、子どもとの人間的な触れ合いや出会いを大切にしたいと思いました。ただ技術指導だけを中心とすると、どうしても『できる』『できない』にこだわり、子どもの気持ちを無視して一つの方向に追い込んで行ってしまいます。そういう指導はしたくないなと思っていました」

                       ※

 もうこれだけで、彼女の高い質の子ども観や人間観、指導観が伝わってくる。素敵なお話だなあと思ってずっと聞き入っていった。

 それから、現在教えている5年生の子どもたちとの日々を話してくれた。様々な子どもたちの生きる姿が伝わってきて、ふかく考えさせられた。そして、一歩一歩明日への歩みを続ける子どもと教師の姿に感動した。

                       ※

 会場にはOさんも来て一緒にお話を聴いていた。

 帰り道は、立川で用事があったので、タクシーで大月に出た。隆先生とOさん、Yさん、ぼくの4人乗り。立川で、串焼やさんに行って飲む。

 そのとき「アッ!」と思った。

 ゼミ生のHさんと、大学駅前から一緒に電車に乗ろうと約束していた。「今日は、東京でダンスの発表会があるから」と。約束をすっぽかしてしまった。ごめんね。