立川駅で、若い二人と待ち合わせ。

 何て人が多いのだろう。次から次へと改札口から様々な人々が流れ出してくる。

 少し早く着いた。地下のオリオン書房をのぞく。

 雑誌『世界』が震災後の手記を載せている。立ち読みしていた。

 それから、温泉宿の雑誌を手にする。

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  そろそろ約束の時間。駅広場に出る。

  Aさんがいた、いた。

 「あれ、二人そろってきたんじゃないの?」

 「先に来て買い物をしていました」

 「そうなんだ。しかし、Bさんは遅いね。もう彼女の乗る列車は駅を出ているよ」

  すると、Aさんは笑いながら言った。

 「Bちゃんは、あまり家を出ない人だから、きっと迷っていると思います」

  全然、心配していない。

  その時、Bさんが向こうから走ってきた。笑っている。

 「ごめん!少し迷っちゃったの」 …やっぱりね!

                     ※

  どこか食事をする場所を探した。

  駅ビルの上のレストラン街をぶらぶら探索して、イタリアン風の店を選んだ。

  それから食事をしながら二人の仕事の様子を聞いた。

 「5月は本当にしんどかったです。辛くて、何をしているかわかりませんでした」

 「お母さんたちは、『辞めたっていいんだよ』と言ってくれたんですけど…」

 「凄いなあ、それなのに乗り越えてきたんだね。何が力になったのかなあ」

  Bさんは、しばらく考える…。

  遠い昔を振り返るようにして、言葉を探している。

 「何だか、5月頃のことは忘れてしまいました。今年1年が、まるで3年経ったみた

 いな気分です。同期の仲間たちと出会って、怒っちゃったとかお話を聞いているう

 ちに、ああ、そんなことで怒ってもいいんだ…って思ったんです。その頃から少し変

 わりました。 夏を過ぎてからは、何か大きく変われたみたいです…」

                     ※

  二人とも口をそろえて言うことがあった。

 「もう、わたしが二人いたらいいのにって思いました」

 「えっ、それどういうこと」

 「仕事をしているでしょ。12時を過ぎるとあっという間に時が過ぎていくんです。気

 づくと午前4時だったりして…。それで、私がもう一人いたら、私がこっちの丸つけ

 するから、分身のあなたは新任研の報告書を書いてね、なんてやれるでしょ」

  彼女はとてもいい職場や学年で過ごしている。いろいろな困難があるけれど、一

 度も叱られたことはないというのだ。学年のみんなも困ったときは一緒に考えてく

 れるという。

 「職員室に困ると電話するんです。そうすると誰かが来てくれたり、職員室でその

 子の心が落ち着くまで面倒をみてくれるのです」

 「それは、いいなあ。素敵なことだよ」

  元気な顔を見られてよかったなあと思う。ふと、木村百合子さんのことを考えてし

 まった。彼女もこんな職場だったらな。

  それにしても、11月、12月は炬燵に入ったまま寝たそうだ。それはやめなくちゃ

 あね。

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  お昼を食べた後、今度は「ケーキとコーヒー」のお店を探して入る。ぼくは紅茶だけ。二人は素敵なケーキを食べた。