本屋さんのレジで

 小さなプレゼントを買う必要があって、それを手に取ると紀伊国屋書店のレジにならんだ。カレンダーを買った昨日のこと。

 何だか申し訳ないくらいな商品で、包装紙で包んでもらうのは悪い気がした。けれど若い女性の店員がぼくを見てニッコリ笑う。つい頼んでしまった。

「何か小さな袋があったら入れてくれますか」

「プレゼントですね。お包みしましょう」

「えっ、そこまでしていただかなくていいんですよ」

「いいえ、かまいません」

 女性店員は、再び笑顔を見せるとレジを離れ遠くの棚から包装紙を持ってきた。それから、小さく二つ折りにしてペーパーナイフで切り取る。その半分の方の一枚で商品を包み始めた。

 幾度か繰り返すのだが、何かうまくいかないらしい。はみ出しても飛び出してもかまわないのだけれど…と喉元まで言葉が出たが、あまりにも真剣に対応してくれる。口をつぐんで見ていることにした。

 とうとう女性店員は、その包装紙ではうまく包めないみたいで新しい紙を用意した。そのまま全体を包んでくれればいいよと思ったけれど、彼女は再び一枚の包装紙を3分の1ほどのところで織り込んで切り取った。

 今度は、ぴったりいくみたい。見ているぼくの方がほっとした。

「なるほど!」その技は流石だった。折り返して、ちょっと折り返して、筋目がぴたりとあって見事な出来栄えだ。プレゼント用のシールまでつけてくれた。

 彼女は再び笑顔を見せて言った。

「お待たせしてしまって申し訳ありません」

「いえいえ、ありがとう」

 それ以上の言葉でお礼を言いたかったけれど失礼になるので辞めた。プレゼントはさらに小さな紀伊国屋書店の紙袋に入れてぼくに手渡された。ちょっと心が弾む出来事だった。