古代の旅

 池澤夏樹著『パレオマニア ―大英博物館からの13の旅』(集英社文庫)を読みながら、しばらく世界各地に思いをはせながら旅を楽しんできた。

 行き先は、13カ国。ギリシャ、エジプト、インド、イラン、カナダ、イギリス、カンボディア、ヴェトナム、イラク、トルコ、韓国、メキシコ、オーストラリア。勿論、本の中の旅だけれど…。

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 博物館の収蔵品の中で著者が気にいたものについて、それがつくられた現地を訪れながら人間の作り出す文明や文化を考えていく物語だ。出土品や建築物の一部等が取り上げられるのだが、その時代を生きた人間の作品にこめられた願いが甦る。それは、置き忘れられた時間の塊としてでなく、単なる過去の遺物としてでなくたち現れる。ぼくには面白かったが、まさかこんな本と出合えるとは思わなかった。

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 夕方、歯医者によってから二子玉川へ。紀伊国屋書店で新しい年のカレンダーを買う。コーヒーを飲みながら岩波の『読書のとびら』を読んでいた。岩波ジュニア新書にはあさのあつこ編の『10代の本棚』が最近出版された。いろいろな人たちが10代の読書を語るのだが、幾人かの人たちが『赤毛のアン』をあげていて興味深かった。懐かしい。

 川端裕人のこんな言葉が心に残る。

―『ぼくは作者が書いただけではまだ、作品は未完成なまま「おりたたまれている」状態で、誰かに読まれてはじめて作品として展開し、完成すると、感じています』