待ってました!
水曜日、家を出ると雨はもう上がっていた。黒い鞄を背負いながら、キャリーバックを引きずって駅へと急ぐ。
「何をいったいそんなに持っているの」
この姿を見てときどき佐藤隆先生に笑われる。
背負う鞄が重いと腰に負担がくる。今はほとんどキャリーバックに重い荷を詰め込んでいる。中身は授業やゼミで使用する本・ノート、その他の資料類だ。今日は、この中にこの間いただいた『干しいも』と数年前の学級通信一年分が入っている。
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立川駅で昼のおにぎりを買って特急『かいじ』に乗った。大月駅に向かって電車が走ると空が明るくなり始めた。雲の切れ間から青空がのぞく。
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12時を少し過ぎてゼミ室に着く。お湯を沸かす。荷物の整理。そして事務棟へ。出勤簿に印を押した後、二日分の授業のレジメや資料を印刷する。
それから5限の授業までは、学生の質問に答えたり授業準備をしたり、必要な本を読んだりする。きょうは2時から、学生のTさんとの約束があった。
「昨年、先生の臨床教育学の授業をとっていましたTです。卒論をまとめる関係で先生の学級通信を見せてほしいのですが…」
Tさんと話していると、ゼミ生のHさんがやってきた。ゼミ室でイヤホーンをあてながら聴き取った話を文字に起こしている。こちらも卒論で大忙し。Tさんとのお話が終わる頃、院生のMさんが顔を見せた。のびやかな笑顔で…。Mさんともまた少しお話をする。
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4時半から3年生を中心とする『生活指導論』の授業が始まる。窓の外はいつの間にか冬の日が落ちて薄暗くなっている。4階の階段を上る。教室にはたくさんの学生たちがあふれている。
今日は、『スポーツと人格形成』の二回目。前回の授業では語りきれなかったので連続講座。
講義を始めてすぐ、ぼくの方に顔をあげて瞳を輝かせているSさんを見つけた。なんだか楽しそうでうれしそうで…。何かあったのかなと思っていた。
授業を終えてみんなが簡単な感想レポートを提出していくのだが、このときSさんがゼミで使用している『対話ノート』を出しながら言った。
「先生、明日が楽しみなんです!」
「…えっ!…そうか、明日のゼミか」
Sさんは、とても隠し通せないという顔で笑いながら言った。
「先生、ブログ読んだんです。明日、干しいもが食べられるんですよね。それが楽しみで、楽しみで…」
講義中の笑顔は、それだったのだ。持ってきたぼくも喜んでもらえて、何だかとてもうれしくなった。