木村百合子さんの裁判
午後からずっと気になっていた。新任教師・木村百合子さんの亡くなったことに対する公務災害認定を求める裁判、静岡地裁判決の日だった。夜、勝訴の知らせが、佐藤博さんからあった。
よかった!本当によかった!
木村さんは帰らぬ人となってしまった。教師になったばかりの日々を、困難を聴き取られ、援助がなされ、丁寧に支えられていれば、自ら命を絶つことなんてなかっただろうに! 思い出すたびに悔しく思う。もっと早く手がうたれていれば…。
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今回の裁判の与える影響は大きい。木村さんのご両親がこの裁判を闘われたことで、これから教師を目指す全国の若い人たちをどれだけ励まし、支え、働く状況の質的な変化を生みだすことになるか。
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以下に佐藤さんからの一報を転載させていただく。
教師が、安心して生き生きと働ける状況をつくりだすために被告側に控訴しないよう、是非みんなで手紙やFAⅩを出して行きたい。
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『今日、静岡地裁で木村百合子さん自死の公務災害認定を求める裁判の判決がありました。
支援者と報道関係者であふれる法廷での判決は「公務外災害認定処分を取り消す」という主文のみの、簡潔な勝訴でした。
同様の裁判では、地裁(1審)で勝訴した初の事例となりました。
2004年、新規採用されたばかりの9月に自ら命を絶った百合子さんに何があったのか、ご両親の「娘の死を無駄にしたくない」という思いから、この裁判は始まり、新採教師をめぐる全国的な困難と苦悩を重ねて多くの支援者が裁判を支え、3年3ヶ月に及ぶ長い裁判でした。学びをつくる会でも集会でご両親をお呼びしてお話しをうかがったり、支援活動を続けてきました。
今回の判決理由はいくつかの点で画期的でした。
これまで公務災害が認められない理由はつねに「本人の弱さ」でした。
今回も被告側は「精神的に未熟」「性格上の脆弱性」「同人の個人的な要因」をあげ、「公務と因果関係なし」と主張してきました。
今回、裁判所の判断は彼女が新採でありながら直面した学級の困難、支援体制の欠如と圧迫を丁寧に分析した上で、「ストレスが非常に強ければ個体側の脆弱性が小さくても(精神が)破綻する」という「医学的知見」を採用し、精神疾患を発症させる危険性は「同種労働者の通常勤務できる」人、いわゆる平均的、普通の人を規準に判断すべきではなく、「もっとも脆弱である者を規準とするのが相当」として、最弱者規準説とも言える新基準を示したことです。
問題行動のたえなかった児童を「前年までは問題がなかった。本人の指導が悪かったから」という被告側証人(同僚)の主張も、「かかる年代の児童においては、指導する者の年齢・性別・経験等によってその指導に対する反応が異なることは十分あり得ること」として新採女性教師特有の特別の困難と彼女の誠実で真摯な努力を認め、職場に困難を共有し組織的に支援する体制がなかったことを断罪しています。
くわしくはあらためて報告したいと思いますが、とりあえず、時代が動いている予感を感じさせる判決だったことをお知らせします。
勝訴はしたものの、今後に不安もあります。それは被告側が控訴する可能性です。
被告側は代理人のみで、判決にもだれも来ていませんでした。不誠実であると同時に敗訴を予感していたのでしょう。
「最弱者規準説」はこれまでの「基金」側の論理を根底から覆すものなので、控訴の可能性は少なくありません。
ぜひ、ハガキかFAXで控訴しないよう要請して下さい。控訴可能期間は2週間です。
①FAX 03-5210-1347
〒102-0093 東京都千代田区平河町2-16-1 平河町森タワー8階
地方公務員災害補償基金 理事長 橋本 勇 様
②FAX 054-221-3142
〒420-8601 静岡県葵句追手町9-6
静岡県経営管理部 職員局 福利厚生課内
地方公務員災害補償基金静岡支部 支部長 川勝平太 様
「木村百合子さんの公務災害認定を命じた裁判の控訴をしないよう、強く要請します」
など
以上、よろしくお願いします。 佐藤 博 』