干しいも

 つれあいの磐田市に住む中学時代の友人フミちゃんから『干しいも』を送っていただいた。大量だ。フミちゃんの家はお茶づくり農家だ。ご主人と二人で、茶畑を大規模に営んでいる。我が家のお茶はすべてここからいただく。

 ぼくは、お茶の葉をたくさん入れて飲む。入れたてのお茶の苦味が好きなのだ。しかし驚いたことに、フミちゃんの家はもっとお茶の葉を入れるらしい。もったいないのだけれど、それがおいしいという。上には上がいる。

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 いただいた干しいもを食べた。懐かしい味がする。子どもの頃、祖母が蒸かしたイモを包丁で切って笊に乗せ、冬の日の当たる屋根に置いた。やわらかなイモが太陽を浴びて少しだけ硬くなる。この微妙なところがおいしい。

 子どもたちは、かくれんぼや缶けり遊びをしていても、お腹がすくと、家に飛び込んで戸棚を開け、干しいもを数枚手づかみしてポケットに入れて遊んだ。ひび割れた手、カサカサの赤い頬、唇の端が切れていたりして…。 

 そうだ、凧揚げをしているときも、竹馬を作って乗っていたときも片手に干しいもを握っていた。

 東京に出てから、ほとんど食することがなくなった。何だか数十年ぶりに食べたような気がする。

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 いただいた干しいもは食べきれない。

「ゼミ室にもって行くよ」とぼく。