M君が一番に来た!

「先週渡し忘れた北海道のお菓子があるの。『講義の合間にゼミ室に寄って』とみんなに連絡してくれないかな」

 自宅近くの駅のプラットホームで電車を待ちながら、4年生のYさんと3年生のMさんに連絡を入れた。

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 12時を少し過ぎて大学のある駅に着いた。坂道を登っていくと道の両側に工夫をこらした看板が列をなして並んでいる。

「ああ、明日から大学祭だ!」

 1号館の前にはたくさんのテントが…。数えると10を越す。模擬店がでるんだね。昨年は冷たい雨だった。今年は、確実に晴れる!よかった!

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 部屋で講義の準備をしていると「コン、コン」とドアを叩く音。

「来た、来た。第一号は誰だろう…」

 大きな体が現れた。バスケ部のM君だ。

「君が第一号だよ。Mさんから連絡をもらったんだね」

 M君がおいしそうにお菓子を食べる。

 再びドアを叩く音。

「こんにちは、先生」

「やあ、二人ともよく来たね」

 華やかな笑い声が響いてゼミ室がにぎやかになる。

「みんなお昼はどうしたの?」

「勿論、食べてきました!」

「わあ、それでもお菓子入るんだ!」

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 今度は3度目のドアを叩く音。4年生のYさんがやってきた。卒論の進行状況を語りながらお話しする。Yさんからは先週I県のお土産、おいしい羊羹をもらっていた。3年生のみんなも相変わらず、里帰りしたりするとお菓子をお土産に持ってきてくれる。語り合いながらちょっとお菓子をつまむのも楽しい。ありがとう。

 それで、ぼくも先週北海道に行ったから空港でお土産を買ってきたんだけれど、冷蔵庫にいれておいてゼミに持ってくるのを忘れてしまった。

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 講義レジメや資料を印刷して一息ついていると、Hさんがやってきた。

「珍しいね。一人じゃない」

「わあ、このお菓子好きなんですよ。おじいちゃんが物産展でよく買ってきてくれました」

 それから再びちょっと静かになって「コン、コン」とドアが鳴る。「今度は誰だろう」

「先生、久しぶりで~す!」

それは、Kさんだった。鹿児島で教育実習を一ヶ月していたから会うのは本当に久しぶり。8月以来だもの。元気そうでよかった。

その後、院生のMさんと話していたら3年のMさんとTさんがやってきた。そして、5限の『生活指導論』を終えると、SさんやHさんが「先生、お菓子いただきま~す」とやってきた。

6時半、ゼミ室を出る。大学祭実行委員だろうか、ステージのそばで何か語り合い準備をしている。「いいな、大学祭はいいな」とつぶやきながら帰る。