雨の札幌

 9月30日、昼過ぎ、新千歳空港着。到着ロビーから出発ロビーに出て3階の食堂街に行く。ここでお昼を食べてから札幌に行くことにした。

エスカレーターを上るとおいしそうなお店がいっぱい並んでいた。『ラーメン道場?』に入る。北海道のラーメン店がたくさん集まっている。適当な店を選んで席に着き、札幌味噌ラーメン中辛を頼んだ。おいしかった。「北海道に来たぞ」と思った。 

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札幌駅に着くと外は霧のような雨が降っている。ホテルに行くにはまだ早い。北海道大学のキャンパスを歩こうと思った。二つ上のいとこがここで学んでいる。田中孝彦先生も都留に来る前はここにいらした。

構内に入ってから、ゆるやかなカーブの道を歩いていく。巨木が何本も立っていてその根元には緑の芝生が広がっていた。真っ直ぐにいった突き当たりの農学部は古い建物だ。勿論、クラーク博士の頃のものではない。入り口にこんな張り紙がしてあった。

『外来者は受付でお名前を記入してください』

大学は観光客や見学者に自由に開かれている。ふと見ると20人くらいの団体客が列を作って歩いていく。ぼくは一人で農学部から昔の図書館跡の建物を見て、博物館へ行った。これがなかなかよかった。昭和のもっと昔からの建物のような感じがする。一階の展示室を見て、それから3階にあがった。職員が「今日は」と丁寧に挨拶していく。うれしい。

隣室から中高生の声がした。「おや!」と思って振り返ると、7・8人の中学生が引率の先生と一緒に職員の説明を受けている。

「もしかしたら修学旅行生かな…」

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 1時間くらいして再び外に出てクラーク博士の像を見ると駅に戻った。駅のすぐ近くに紀伊国屋書店のビルがあった。1・2階のフロアーがとても広い。本がきれいに並べられている。ジュンク堂のような高い背の圧迫感がない。のびやかな気持ちで本の世界を歩く。それぞれのよさなんだろうけれど。

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 まだ、ホテルには行きたくなくて、2階の奥の『イノダコーヒー』によった。

「角の席をいまご用意します。よかったらどうぞ…」

 ぼくがゆっくりと本を読むのだと思ったのだろう。角のガラス張りの席に案内してくれた。コーヒーがおいしかった。持ってきた本の半分近くを読む。ときどき疲れてふと顔をあげると歩道にやさしくまだ雨が降っている。

店を出るとき「紀伊国屋カードを持っていらっしゃいますか」と言うので、それを見せると50円安くしてくれた。

「ここはいいな。落ち着くな。また来よう」と思った。