台風15号

 「おばあちゃんと連絡が取れないの…」

 娘から電話があった。台風15号は浜松に上陸している。おばあちゃんとは、ぼくの母のこと。袋井市の村の中の山あいの家に住んでいる。娘は袋井市の駅前近くの町に住んでいる。

「電気がつかないみたい。おばあちゃんから名古屋の緊急連絡事務所へ通報があったみたい。それで、名古屋の方の事務所から浜松の伯父さんの方に電話がいったんだけど、そちらも電話がつながらなくてわたしのところに連絡が来たの」

 ちょっとややこしいが一人住まいの高齢者に対し、袋井市がこうしたシステムを導入しているようだ。

 ぼくも、母のところに電話を入れてみたがつながらない。避難命令が出てどこかに避難しているか。それとも暗い家の中で不安で電話口にでないでいるか。

 浜松の兄の携帯を聞いて娘が事態を理解しているので電話してくれた。兄が袋井の母のところに向かったという。よかった。とにかく連絡を待とう。

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 5時半。兄から連絡が入った。母は元気とのこと。よかった。電話には気づかなかったようだ。家の電気はいまだつかず。夕食は兄が買っていったから大丈夫とのこと。

「明日、ぼくが袋井に行くよ。夜、泊まる予定だから…」

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 幼い頃の台風のことは前も書いた。「ズシン!」と激しい音がして家が傾くほどのがけ崩れがあった。母の立つ台所の窓がビシリと割れた。裏山の木々が横滑りするように崩れ落ちてきたのだ。こんなことが二度ほど。弟がまだ1歳くらいの赤ちゃんのときは、奥の部屋から母が弟を抱いて座敷に飛び込んできた。

 いま関東圏の様々な鉄道が止まっている。また避難勧告も。おおきな災害にならないといいが。