月

 花屋さんにススキが並んでいた。明日は『中秋の名月』ですよ…と解説入りで。

 昨夕あたりから空に上る月を見て「もうそろそろかな」と思っていた。新聞を見ると、明日の月齢は14.0になっている。満月より一日早いけれど今年中秋の名月は12日ということ。

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「ススキを取ってきて」

祖母に頼まれて、子どもたちは、川の土手や山すそに生えているススキを取りに行った。気をつけないとススキの葉で手を切る。小さな傷でも切り口が深いから傷跡がくっつきにくい。薬箱には、当時バンドエイドなどなかったから、少々の傷はほっておいて深い傷は包帯を巻いた。ススキで切った傷跡はシクシクと後も痛い。

祖母はだんごをこねる。おはぎも作った。ぼくは、お団子もおはぎも嫌いで食べなかったから、祖母が少し寂しそうだった。いまは好きになったけれど。

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3,11から半年たった。いつもの年の時間の流れとはまったく違うときが刻まれていく。“とき”は、止まったまま動き出さない重い石車のようで、地球と言う自然も、作り出してはいけないものを作り出し放出し、これまでとはまったく違った生を、生きなければならない状況下にあるということ…。