夕立
西から駆けてくる雨の音
風が渦をまき水滴を斜めに吹きつける
夕立が来る!
草むらも竹やぶも庭の木々も
小太鼓の連打のように激しい音を響かせて
遊んでいるぼくらの上に 滝の夕立が…
空にある一千の蛇口が開いたように
ぼくのランニングシャツも水色の半ズボンも ずぶぬれ
土ぼこりをつけていた細い腕も足も ずぶぬれ
佳代の髪もひまわりの絵柄のワンピースも ずぶぬれ
小麦色の肌が雨に濡れて輝いて
庭はあっというまに土色の湖
あふれ出す水は坂道を転がり落ちる
そのとき
突然の雷鳴 白い閃光
ぼくらは家に駆け込んだ
座敷の障子を開け放ち 蚊帳の中で息をひそめる
頬杖をつき恐々と外をのぞく
それはまるで黒縁の額の中の一枚の絵のよう
色のない風景が まばゆい光の中で命を吹き込まれる
神の怒りのようで 大地と空の祭りのようで