楽山を大切にする人

 今日も法政大学では教科研大会の準備が行われている。ぼくは、成績のことがあって都留に行った。

 妙な天気ですっきりとは晴れず、雲がときどき青空を見せて白く輝いたりしていた。ところが帰るときはザーッと雨が降ってきた。

 富士急河口湖線に乗ると、本を閉じる。自宅から本を読み続けていた疲れと、あたりの景色が目に飛び込んでくるからだ…。

              ※

 先日から青いクリの実が気になっていた。電車が走りすぎていくとき途中の駅舎の後ろに大きな栗の木が一本あって青い実をどっさりとつけている。あれは丹波栗のように大きな栗ではないだろう。でも、もうここでは暑い夏の中で熟した秋を待つように栗が成長している。

 この日、スケッチブックを持って楽山に登った。まだ紫陽花が咲いている。少し登っていくと紫陽花の花や枝を剪定している方とであった。歳は70歳くらい。

「ごくろうさまです。紫陽花の剪定ですか」とぼく。

「はい。こうしてやらないと来年よい紫陽花が咲かないのです」

「そうなんですね。毎年、手入れをなさっているから美しく咲くのですね。今年は咲くのが遅かったですね」

「はい、天候に左右されます。今年は去年よりちょっとうまくいかなかったですよ」

「去年の美しさ。覚えていますよ。花が見事に咲いて!今年は、緑の中に花がある感じでしたね」

「そうなんですよ。ちょっと葉や茎が伸びすぎたりね」

「長くやってらっしゃるのですか」

「かれこれ10年になりますかね。これが楽しみなんですよ。生きがいかな。時には10人近くお手伝いをされる方も来てくださってね…」

 よい話を聞いた。ご自分の楽しみのようにここを大切にしてくれている。誰もいない夏の午後をこうして思いをこめて働く人がいる。

                 ※

 明日は、朝から大会準備。夜は講座の会議。そして、いよいよ明後日から大会だ。今日もゼミ室にやってきた学生に「おいでよ。来るといいよ」とお誘い。