読書についての発言

 4年生のゼミの時間、1分間の近況報告のとき、N君が鞄から本を取り出して言った。

「教採試験が終わって、受からなかったら他の仕事を考えようかと思っていたのですが、二次試験にむけて『教師力』の本を読みだしたら面白くて夢中になりました。何だか再び教師になりたい気持ちが強くなりました。いい本だなあと思います」

 ぼくは思わず言った。

「N君、その本はね、友人の今泉君や佐藤先生、それから渡辺君たちと創った本なの。みんな凄く力をいれて書いたんだ。君の心を奮い立たせたなんてうれしいなあ」

 N君と楽山の紫陽花を見にいきながら、続きのお話をした。

「君はいま授業創りのところを読んでいるんでしょ。どこが君を夢中にさせたの」

「授業の進めかたで実習なんかのとき、うまくいかなくて悩んでいたんです。でもこの本を読んだら、なんだかこんなふうにしたら子どもがのってくれる、楽しんでくれると思って、教師っていいなあ、こんな授業をしたいなあ…って思ったのです」

「そうか。それはよかったね!」

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 3年生のゼミの時間にも読書の報告が何人かからあった。

「『荒野』(桜庭一樹著)を読み終わりした。面白かったです」

「そうか。3冊読み終えたんだ」

「読みながら胸がキュンとしました」

「あの本を読んだとき、ぼくは鎌倉の街を歩きたくなったよ」

 この本の出発はAさんとの会話からだった。

「先生、何か読む本ありませんか」

「そうだね。少女の初恋と成長物語なんかを読んでみないか」

 そう言って最近本など読んだことのないというAさんに『荒野』をすすめた。すると次のゼミの時間までに何と3冊読み終えてきた。

「先生、面白かったです。それで1冊読み終えて、続きが読みたくなってゼミ室に次の日きてまた借りていったのです!」

 うれしい言葉だった。それに刺激されて、友だちのUさんが読んだというわけだ。

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 3年生のSさんは、『1週間に1冊は読むといい』というぼくの提案を受けて何冊も本を読み続けている。そして対話ノートにこんなことも書いてくれた。

「先生、読み終えた本をそのままにしておくのは勿体ないです。ゼミ室に置いてもいいですか」と。

 毎日を運動部で過ごしているHさんも、もともと本が好きで今は『守り人』シリーズにいまはまっている。

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 今日は学生大会があっていつもより少し早く帰った。それで、本屋さんによって、みんなに読んでもらおうと思って文庫本を2冊買った。

 『体育座りで、空を見上げて』『しずかな日々』―。どちらも椰月美智子の本。