大学での授業

 金曜日は、家で過ごすけれど、大学の授業の後の感想文を読んだり、ゼミ生との『対話ノート』にコメントを入れたり、簡単なお便りを作ったりして一日がほぼ終わる。

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 今週扱った『いじめ問題』についての授業、S君がそれを深く受け止めて書いている。

「今日の講義は、自分にとってとても忘れられないものになりました。90分間、こんなに一生懸命、人の話を聞いたのは恥ずかしいけれど初めてだと思います。『いじめ』はとても深い問題だと思います。今日の話を聞いて涙が出そうになることが何回かありました…」

 『いじめ問題』を扱うときは、ぼく自身ある程度覚悟を必要とする。学生たちの過去の痛みや辛さ、心の底に蓋をして閉じ込めておいた感情と出会うことを避けては通れないからだ。一人ひとりが実に深い人生を背負って生きている。その感想文に対し、ぼくの生き方が問われてくる。一枚一枚をおろそかにはできない。かけがえのない“生”がそこに立ち上がってくる。よくぞ生きてきたね!と声をかけてあげたくなる感想文もある。そんな中から、

「先生、お話にいっていいですか」

と幾人かがときどきゼミ室を訪れる。

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 木曜日は朝から忙しい。1限と3限にゼミ、4限に臨床教育コースのカンファレンスがあって5限には生活指導実践演習の授業がある。びっしりとつまった日程だ。しかし、学生たちの疲れがたまる5限の授業でも、彼らは心ふるわせて真っ直ぐに授業を聞いてくれる。それがうれしい。

 この日の授業には、ゼミ生のAさんやUさんがいた。この二人が最後まで感想文を書いているから笑った。Aさんが書きかけの鉛筆を止めて、ちょっと得意そうにいった。

「私ね、凄い集中して今日の授業をきいていたんです」

 それを聴いてぼくも笑った。