『ひかり』は満席
久しぶりにぼくの番で、静岡の義父を訪ねた。91歳の義父は、ぼくの行くのを喜ばないわけではないが、その思いを聴き取るためには、ぼくではだめらしい。かゆいところに手がとどかない。ぼくは、昔からぼんやりしている。
11時22分。新横浜から新幹線『ひかり』に乗った。自由席のホームには随分人が並んでいた。どこも6・7人いる。混むことが予想されるので3号車まで歩く。
白い巨体がすべりこむ。安全扉と車両の扉が同時にあいて客席を見る。空席はあるがどこも人が座っている。3人席の真ん中に座って本を読み出した。
中公文庫の森田洋司著『いじめとは何か』。前半が面白くて後半がやや形式的にみえ、ぼくには少し違和感が残った。しかし、この問題を考える上では参考文献になるだろう。
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介護リハビリセンターに着くと義父が車椅子に乗っていた。両手は、一年前よりずっとスムースに動いている。しかし、あらゆるところが痛むようだ。愚痴を含めていろいろな話をたっぷりと1時間半近く聴く。義父は15分ほど横になり、再び車椅子に座った。
受付の若い女性が手紙を届けてくれた。
「あの娘はね、とてもやさしい。丁寧にお話をしてくれる。対応がものぐさだったり下品じゃないんだよね」と義父。
毎日対応するスタッフのことを考えると、一人ひとりに丁寧な言葉をかけたり援助したりするのは大変なことだろう。だから義父はいつも「やってもらうから、感謝の気持ちでいるよ。絶対、嫌なことは言わないようにしている」とつぶやく。
帰りの新幹線『ひかり』も満席。2号車に乗る。こんな普段の日も『ひかり』はよく使われるのだ。一時間に一本の運行だけれど。