レストランでばったり

 和光大学のオムニバス授業の一つとして、山本由美先生からお話を頼まれていた。それがとても興味を惹かれる企画。『学びをつくる会』の岩辺先生と一緒にお話をして質問に答えるという試み。時間は、1時から4時までのたっぷりの3時間。

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 和光大学に行くには鶴川駅で下車する。

 12時。お昼を食べて行こう。駅前のビルの中から一つを探して中に入る。エスカレーターを上って二階へ。そこには、レストランが数軒、本屋さんも2軒…。

「どこに入ろうか。約束は12時半。ゆっくりはしていられない。コーヒーとスパゲティにしよう」

 緑の樹木が入り口に並べられていたお店に入る。

 白いエプロン姿のウェイトレスさんがやってくる。

「時間があまりないんだ。スパゲティとコーヒーをちょうだい。時間がかかるようならスパゲティはいらないよ」

 彼女は律儀に調理場と連絡を取り、ぼくの許す時間を聞いて、優先的に作ってくれることになった。

 ほどなくテーブルの上に注文の品が並ぶ。食べ終わる頃、面白い声が耳に入ってきた。

「何か早くできるものはあるかな? カレーがいいかな」

 思わずクスリと笑った。なんだ、ぼくと同じようなことを言う客がいるんだ。珍しいな。

 顔を上げてびっくり。件の客は、岩辺先生だ。手を振る。トコトコと岩辺さんがやってくる。

「凄い、偶然。このお店で出会うとは!」

 二人で話して、ぼくが先に大学へ行くことにした。山本先生が心配されると思って。

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 授業は楽しかった。始めにぼくが1時間。それから少し休憩をとって岩辺先生が1時間。そして質疑。楽しい時間だった。

 ぼくは、この日を楽しみにしていた。岩辺先生とご一緒して、講義をし、質問に答えるなんて今までにないこと。岩辺先生は『学びをつくる会』の立ち上げに中心となり、会を引っ張ってこられた。20代の頃から、ぼくは、組合や教育実践で活躍される先生を見て憧れてきた。そして、組合の執行委員長などをしているとき岩辺先生を教育研究集会の講師としてお呼びしていた。その岩辺先生に誘われ、大月書店の『教えから学び』のシリーズの本に実践を執筆した。40代の頃だったか。

 今日は、その岩辺先生とご一緒してお話ができる。そのことが、何だかかけがえのない時間のようでうれしかった。

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 終わって山本先生と、先生のゼミ生と、岩辺先生とぼくで、軽く飲む。帰りの電車でお話をしていてちょっと乗り過ごしてしまった。