暑さも辛さもはんぱじゃない

 昨日の昼ごろ、都留の駅に降り立った。辺りに風一つなく空気は熱を帯びてまるで釜の中にいるようだ。都心の照り返しのビルの空間にいるのと似ている。

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 授業レジメの印刷を終えて、楽山に行く。紫陽花はどうか。ほんの少しだけ水色の花をつけている。再来週あたりが見ごろかな。

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 5限の授業後、公開臨床ゼミがあってゼミ室に8時に戻る。GさんとIさんが学習をしていた。

「Iさんお帰り。中学校の実習無事終了したんだね」

「お腹すいたなあ。君たち、夕飯は済んだの」

「いいえ。まだです」

「じゃあ、ラーメンでも食べに行くか」

 Gさんが本をバタンと閉じて叫んだ。「行きま~す」

 急いで机の回りを片付けて、3人で出かけようと思った瞬間、見事なタイミングでHさんが登場する。

「ちょうどいいところに来たね。ラーメンを食べに行く。行くかい」

「行きま~す!」

 Hさんの顔が天使のように笑っている。

 それでラーメン隊は4人になった。ぼくの、いつものさびしい夕食がこれでにぎやかになった。

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 ところが目当てのラーメン店に着いたら店内はいっぱい。

「お客さん、申し訳ないけど時間がかかります」

「じゃあ、Iさんお勧めのパスタ屋さんに行こう」

 小さな扉の酒類なしのパスタ屋さんにはいる。名前はBと言う。

ぼくが頼んだのは『小エビ入りリゾット』。野菜トッピングでナスと小松菜を特注。3人はパスタ。ボリュームもたっぷりある。おいしい!ここに来てよかった。

 ピザも一枚注文した。

 このピザを食べるとき、店主がとんでもないものを持ってきた。半端でない激辛タバスコ(?)と柚子作りの香辛料。

「ものは試しだ。ちょっとだけかけてみるね」

「先生、大丈夫ですか」「うん、少しだけね」

 ポンと小さなビンを叩くと、赤い唐辛子ソースみたいのがトロリとピザにかかった。

「わっ、かけすぎた。ちょっと誰か食べて」

 この悪魔のような辛さを知らずに、口にしてくれたのはHさん。ぼくが勝手に押し付けたのだけれどね。

「ム…ムム…。先生、これ辛いです。半端じゃないです。唇も歯も喉もギリギリと痛みます!」

あわてて水を飲むHさん。まさかそれほどではないだろう。ぼくもパクリ。「辛い! ふっ、ふっ…。辛いよぅ」

夜は過ぎていく。時計を見たら午後の10時だ。あわてて宿舎に向かう。あんなに熱い一日だったのに、大粒の雨がパタパタと音をたてて落ちてきた。