猫の物語

 福音館文庫の棚を見ていたら『山のトムさん』(石井桃子・作)という本を見つけた。表紙に猫の絵が描いてある。

 「あれ、これは猫の物語なんだ」

 妙な名前の本だなと題名を見て考えていたけれど、猫の物語なら読んでみようと思った。

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 絵を見て驚いた。深沢紅子(ふかざわこうこ)画と書いてある。

 それでうれしくなって本を買う。

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 軽井沢の塩沢湖の周辺に深沢紅子・野の花美術館がある。一階はしゃれたレストランとかわいいお店があって、紅子の描いた野の花の絵葉書や小物などが並んでいる。小さな木の階段をコトリコトリと上っていくと二階は、深沢紅子の作品が並んでいる。ぼくは気に入っていて、自転車でここを何度か訪れている。

 二階の一室に、子どもむけの本の表紙を描いた彼女の絵が並んでいる。見るとなんだかなつかしい。少年時代、この絵にどこかで出会ったような…、そんな感じがするのだ。

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 今日は千葉に行った。片岡洋子先生と先生のゼミのO君と3人で飲む。横須賀線に乗って武蔵小杉から稲毛までまっしぐら。錦糸町から半蔵門線で帰るより少し楽だ。

 家に帰って「ライラ!」と呼んだ。どこからか「チリン」と鈴の音が聞こえて、のっそりと我が家の猫のライラが姿をあらわした。「おいで!」と呼ぶとぼくの膝にピョンと飛び乗ってきた。

 うん、石井さんのところの「トム」君には負けるけれど、ライラもなかなかやるな―、と思った。