スケッチを楽しむ

 2日から四国の松山道後温泉へ。現地で友だちを訪ねていた娘たちと合流する。昼食後、城に上った。夏の始まりのような一日。町全体が黄砂で煙るようにかすんでいる。緑が見えないのが残念。何だか砂の味がしてマスクをして歩いた。

 城を出た後、路面電車に乗って道後温泉に向かう。ここに来るのは二度目。なつかしい。そのときは、ホテルの籠を持ってぶらぶらやってきて道後温泉本館の湯につかった。今回はホテルの温泉を楽しむ。

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 二日目の午前中、正岡子規の記念館を訪ねた後、一人分かれて、公園内を散歩しようかと思ったが、道後温泉本館をスケッチすることにした。

 本館の前は人だかり。写真を撮る人たちや、風呂を楽しむ人たちでいっぱいだ。人力車が5台仲良く前を向いて並んでいる。華やかな朱色のものもある。車夫をするのだろう、屈強な若者たちが声をかける。客が乗ると威勢のいい掛け声が辺りに響く。お母さんと子どもがうれしそうに乗っていた。どこから来たのだろう。おっと、今度は若い二人だ…。

ぼくは、正面左手の饅頭屋さんのショウウィンドウの前に目立たぬように立ってスケッチを始めた。建物の立つ地平線を一本引いて、中心の灯篭から一気に描き始める。上手に描けないのは仕方がない。でも絵葉書より楽しい。この時間が好きだ。

祭りの山車のような屋根瓦を乗せた巨大な木造の湯屋を見ていると、百年の昔と今とが交差する。