菅谷先生の退職講演

 4月16日の土曜日、日本橋の社会教育会館で『教育&社会科ゼミ』の学習会を開いた。よく晴れた暖かな一日。地下鉄で水天宮前駅に向かう。永田町の手前で強い地震の揺れがあって電車が一旦停止。怖くなった。

 駅の階段を上って軽く昼食をとる。席の向こうに春の陽を浴びたビルが見えてホッとする。

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1時の開会。参加者がいっぱいになった。驚く。

 S区のK先生が『初めての初任者指導について』一年間を振り返りながら話してくれた。参加者は、感想や新学期の出来事を思い思いに自由に語り合った。

 若い仲間のS君の話に胸が痛む。指導教員が二人いて一人の巡回教員はいつもしなやかな対応をしてくれてS君を励ましてくれたのだが、構内の指導教員は次々と問題を指摘して校長に報告する。ガラリとドアを開けて校長や指導教員が教室に入ってくる。それだけで、「また何か言われるのかと恐怖が襲ってきました。びくびくとした毎日で、自分が失われていくようで辛い日々でした」と語る。

 ぼくの知りえた新採教師も指導教官が授業を見にきて「そんなやり方じゃだめだ」と言って、子どもの見ている前で新採教師の書いた板書を消して授業の指導をし始めたという。なぜこんなひどいことがまかり通るのか!

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 今年退職された菅谷先生は、田所さんが中心になってまとめた本『ふつうの授業で子どもの学力をつける』(ひまわり社)の理科の授業を担当している。ぼくも共に品川で学びあった仲だ。

 その菅谷先生が、長い教師生活を振り返り、大切にしてきた『学級づくりと理科の授業』を語ってくれた。いい話だった。

 50代を越えて子どもの声を聴き取り、自己のいたらなさを乗り越えていくしなやかな態度、教室を教師の思惑だけで管理せず、一人ひとりの個性を見つけ、それを学級に位置づけうねりをつくりだしていく、子どもたちが瞳を輝かせるように何か具体物を作ったり持ち込んだりして授業を展開する面白さ…。

若い仲間がたくさん参加していた。きっと、多くの刺激を受けたに違いない。都留の大学からも3人が来ていた。

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終わって『飲み会』に行った。そこでびっくりすることがあった。学びの会などによく見えるMさんが、若い仲間の教師を二人連れてきたのだけれど、その一人がこう話したのだ。

「スーツを着ないで参加した学習会は初めてです。これまで体験した研修は、服務のことや授業の至らないことの指摘が中心でいつも緊張していました。今回は凄く楽しく勉強になりました!来てよかったです!」

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少し先輩の教師のみなさんにお願いがあります。

若い仲間の教師が、今年度もまたあなたの学校に採用されたのではないでしょうか。是非、その彼や彼女を『学びをつくる会』や『学びのWA』、『教育&社会科ゼミ』などに誘ってあげてください。語り合う仲間や相談できる仲間ができることで、閉ざされた世界が突然開きます。落ち込むことが続いていないように見えても悩んでいる若者はいっぱいいます。