春のざわめき

 長い間お休みしていた展望車両のある富士山特急が復活した。水色の車体だ。キャリーバックを転がして電車に乗る。宿泊用のシーツや洋服も入っている。大月駅を少し過ぎると右手に真っ白な富士が見える。4月の富士だ。

 まだ緑のうすい山々のあいだに満開の桜が見える。線路脇には菜の花がいっぱい。薄紫のダイコン花もかわいい。つくしは、もうとっくに出終わったのだろう。

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 都留の大学は11日から授業が始まった。ぼくの授業は水曜日から。お昼ごろ大学に着いた。構内には学生があふれ右に左に行きかう。縦や横の流れも混じってぶつかりあう。このちょっと落ち着かない雰囲気がいい。

 みんな何をしているのか。声を嗄らし部活への案内をするものたち。高々と声を張り上げて歌うものたち。1号館の入り口には小さなビラを持つ仲間たちが列をなして…。看板を胸にぶら下げて立っている女学生もいる。旧4年生が去り、新しい人間のつながりと関係がいま築かれる。この何ともいえない“春のざわめき”のようなごちゃごちゃがいい。

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 ゼミ室にいると院生のMさんがやっきて、かわいい入れ物の蓋を開けた。「わたしの作った『ごまだんご』です。食べてください」

おいしくいただく。ありがとう。しばらくすると、院生のGさんが来て、次に新4年のゼミ生Yさんもやってきた。

 5限の授業は臨床教育学。びっしりと席がうまっている。

 終えて感想用紙を集めていたら驚いた。

「先生の授業をとるのは3回目です!」と書いてある。思わず呼び止めて言葉を交わした。