新学期の匂い

 夕方、駅に行くとスーツに身をかためた若者が電車から次々と降りてくる。春、新しい勤務や学校の始まりなのだろう。

 今日は、多くの都市や町や村の学校で入学式や始業式があっただろう。子どもたちとの出会い。震えるような緊張と喜びのなかで今日の日を迎えたのではないか。

 子どもたちも「ぼくの先生は誰か」「わたしの先生はどんな人だろう」と胸を躍らせてやってきたに違いない。

 いつも、若い仲間の教師や学生たちに話すことだけれど、子どもたちは校長先生が名前を呼び上げたその瞬間から、

『ああ、この先生が私の担任の先生。素敵な出会いになったらいいな。この先生と一年間うまくやりたい。先生を好きになりたい』

と思う。その願いに答えてあげる教師になりたい。

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 先日、日本海に面するA県に教師として採用されたT君からメールが入った。ゼミ生ではないけれど、大学の構内でいろいろなお話をした学生だ。

「先生、いよいよ教師としての毎日が始まりました。まだ子どもたちとの出会いはありませんが、職員会議などで周りの先生たちがとてもやさしく教えてくれます。だから、リラックスして一日を過ごすことができました」

と。

 うれしい報告だ。先輩教師たちが学校ぐるみで、新採教師をこんなふうに迎えてくれたらうれしいだろうな。