ゼミの卒業式

 22日、都留文科大学の卒業式典は中止になった。しかし、学部の証書渡しがある。ゼミの4年生たちの卒業と新しい出発を祝ってあげたい。田所先生の車に乗せていただいて大学に行った。

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 走り出すと携帯が鳴る。3年のYさんからだ。

「先生、こちらはいま雪が降っています」

「まさか!今日は卒業の日、何とか雨も雪も止んでくれないか…」

 大月のインターを降りると雨も雪も止んでいる。よかった。

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 ゼミ室のドアを開けてびっくりした。パーティの会場のように鎖の輪飾りが四方を取り囲んでいる。正面には卒業おめでとうの文字。そして可愛い絵が…。3年のゼミ生たちが準備してくれていた。

「今日集まれる人たちで4年生の卒業のお祝いをしよう。でも地震のこともあって参加できない人たちもいる。無理をしないでね」

 そう言っていた。

 テーブルにはお茶とお菓子が並んでいた。4年生にあげる色紙をみんなで書いた。

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 窓の外からにぎやかな声が聞こえる。合唱団や応援団の声も。卒業する4年生たちの大きな輪、小さな輪があちこちにできていて、ときどきどっと歓声があがる。卒業を祝ってかけつけた下級生たちもまた…。

辺りはどんよりとして灰色の世界だ。しかし若者たちの笑顔と色とりどりのスーツや着物姿が、鮮やかな色彩となって、止まった時間を動かし始める。生き生きと命が刻まれる。

「元気をもらえてうれしいね」

と田所さんと話す。

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 2時半ごろ、証書を手にした4年生たちが次々に研究室に帰ってきた。光と色と笑顔と輝きが部屋いっぱいに満ちる。

 みんなで乾杯をした。それから一人ひとりの卒業生にお別れの色紙を渡す。そして、未来への一言。写真もいっぱい撮った。

 わいわいおしゃべりをした後、会の終了を告げようとしたとき、Tさんが突然立ち上がって言った。

「ちょっと待って!」「…!」

「先生にお礼がしたいです」

 4年生全員が並び、Tさんがお話をして、それからプレゼントをいただいた。開けてみてびっくりした。

 4月から1年間のゼミの楽しい取り組みの写真がアルバムに貼ってある。夏の夜の花火大会やゼミ合宿の思い出、クリスマス会や様々なイベント…。

「ああ、ありがとう!」

 くちびるをかみ締めるように言った。

 アルバムの終わりには、1ページづつ、ゼミ生一人ひとりの素敵な写真と思いを込めたメッセージがつけられていた。

 ありがとう! 君たちと一年間学びあいすごすことが出来て幸せでした。感謝!

 そして、このゼミの卒業式を企画してくれた3年生たちにも感謝。