三ノ宮の街歩き

 21日。8階の小さな部屋で目覚めた。ここは神戸の街。太陽が出ている。うれしい。雨はまだ。帰りの切符は旅行会社の設定で午後の4時過ぎ(本当はもっと遅くて横浜着が夜の10時だった)。さて、どうしようか。

まずは朝ごはん。1階に下りて朝食バイキングを頼む。

「支払いは、清算のときにしますか。現金でなさいますか」

「現金で払いしましょう」

「1300円です」

「あれ、宿泊者は1200円って書いてありましたけど…」

「チェックインのとき、お客様からご予約をいただきませんでしたので…」

あれれ、昨日の夜の受付のとき「ご朝食はどうなさいますか」なんて聞かれなかったんだけどなあ…。そんなふうに思ったけれど、口にはださなかった。おいしく食べられればいい。

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昔歩いた神戸・北野の異人館をもう一度訪ねることにした。

北野坂を上っていく。いくつかの商店が店を開き始めていた。旧パナマ領事館の前でチケットを買う。3500円。ぶらぶらと、英国館、仏蘭西館、ベンの家を訪ね、それからオランダ坂を上っていった。なつかしいけれどほとんど覚えていない。

いろいろと異人館を回ったけれど、今回は建物より壁にかけてあった絵の方に興味があった。萌黄の館の前で一休みしていたら、近くの広場から笑い声と拍手が聞こえる。

大道芸だ。綱渡りのパフォーマンスをしていた。石の椅子に座ってみていた。楽しい。少年時代、憧れて庭にロープをはったっけ!

終わってコーヒーを飲んで再び駅へ。お昼は地下のラーメン店で。

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もう帰ろうと思って、新神戸の駅で再度新幹線の時間変更をお願いすると断られた。旅行会社の発行したものは変えられませんと。そうだったよね、忘れていた。仕方がないので地下鉄で再び三ノ宮に戻る。デパートに寄ると紀伊国屋が入っていた。それから三ノ宮のアーケードを歩く。ここは震災で崩れたところではなかったか。もう16年近くが経っているはずだ。凄い人ごみの中で、若者たちが並んで大きな声をあげていた。

「東北・関東大震災へのカンパをお願いします!」

 しばらく歩くとジュンク堂があった。店内をぶらぶらして中井久夫の本を一冊購入した。帰りはほとんど寝ていた。

 新横浜に着くと駅の構内が暗い。市営地下鉄のプラットホームも一昔前の裸電球のように暗闇の陰ができていた。