川べりを走ろうとして

 久しぶりにジャージを着た。少し走ろうと思って…。小さな公園で軽く背伸びして、膝の屈伸をした。

 コンクリートの板をコトコト踏みしめながら走る。最初は快調。だが、200メートルもいかないうちに体の重さが全身にのしかかってきた。こんなはずではないけれど…。考えてみれば、まともに自宅近くで走るなんて30年ぶりかもしれない。

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「一日目から無理をしないほうがいい」

 バス通りから川べりの細い道に曲がったところで歩き出した。そこは深い堀になっていて、両側に舗装された細い道が続いている。ランニングには最適なコース。100メートルおきぐらいに橋が架かっているから、いつでもUターンできる。

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 橋のたもとで5・6人の中学生が楽しそうに話をしていた。少し行って左手を見ると蒲鉾型のドームが見える。体育館らしい。校舎は工事中の塀で囲まれていた。キリンやパンダの絵が描いてある。小学校だ。なんだかそれだけで覗きたくなった。

 向こうからランドセルを背負った小学生が歩いてくる。頬のあたりにオレンジ色の日の光をうけて…。

「そうか、もうこんな時間なんだ」

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 自宅に帰って着替えるとチャイムが鳴った。

「M電気です。遅くなりました。テレビを持ってきました」

 よかった。BSも見られる。