第3回シンポジウム

 明治大学リバティイタワーで、朝から3つの会議が連続した。最初は講座企画の教育学をめぐって。教師を生きてきた日々と教育学がどう関わってきたか。それは、どんな力や意義があり勇気を与えてきたか、あるいは今日の子どもや教育の現状を解き明かすことはできていたのか…。私の中であいまいだったものが問われてきた。あまり意識していなかったから…。

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 11時からは、第50回『教科研・夏の東京大会』の実行委員会。『公開講座』と『終わりの集い』の企画を佐藤博さんと担当していたので提案した。実行委員の方々の様々な意見が寄せられて何か楽しいものができそうでうれしくなった。みなさん、8月6日(土)~8日(月)を、是非予定に入れておいてください。

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 1時前に会議を終えて、今度は2時からシンポジウム。

 今日は学力問題。テーマは『学力競争は学校と日本社会をどこに導くか』

 参加者が今回も会場にいっぱい。今日の一方向的な「学力論」への批判と、未来への見通しを持ちたくて、多くの方々が参加されたのではなかろうか。

 シンポジウムの報告者は4名。みなさんが熱のこもったお話をしてくださった。最初は佐貫浩氏。今日の学力問題が子どもや若者の生きる根底を揺るがしていること、これは憲法第25条の生存権の保障からいっても許されないことだ―、と鋭く問題を提議された。

 続いて現場から吉澤さんが報告。PISA問題や新学習指導要領に揺れる現場の話をしながら、吉澤さんの教師として生きる日々の原点が話された。

 「子どもたちが何を求めているのだろう?!って、いつも考えるのです。子どもって、どの子も認めてもらいたいし、つながり合いたいし、愛されたいのです。これをどうみんなに保障していくか。どんな関係を作り出し、どんな文化を創っていくか…。それが教師としていつも考えることなんです」こうした話をしながら、学力に関わる話をしてくれた。

 3人目は若い研究者の本田伊克氏の報告。新学習指導要領の学力観と教育方法観を、前回の指導要領と比較しながら話してくれた。新学習指導要領の中に見え隠れする政策側の錯綜と混迷を指摘する。同時に、「子どもたちが育つ社会的・教育的条件への配慮を決定的に欠いたまま」子どもたちを能力主義的な競争原理の中に追い込み自己責任論理を押し付けるやり方について批判する。

 最後に田中昌弥氏が『学力論の展開・到達点と課題』について報告された。私は、その論議の中心的テーマについても興味深かったが、お話の端々で話される「強さの論理のもとに切り捨てられたり忘れられたりするものがあること、そこに注意すべきなのですよね」という趣旨のお話がとても心に残った。

 例えば『速さと正確さ』が現場の教育で求められている。それが正義のように見えるけれど、『速さ』とは『いろいろなものをそぎ落としたもの』である、『正確さ』とは『それで完結してしまい周りをみないこと』である、この『陥穽を質的に見るべき』だという指摘。鋭いなと思う。

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 終わって頭が疲れたけれど、みんなでワイワイお酒を飲んでお話した。楽しかった。岩辺さんが日本酒のいろいろな銘柄を次々に注文して飲む。本当においしそうに。佐藤博さんや佐藤隆先生も負けてはいない。終わって佐藤博さんや田所さんと神保町まで歩いた。半蔵門線で帰る。