小さな上映会

 二週間ほど前、新聞折り込みに、川崎の3会場で『月あかりの下で』を上映するというチラシが入っていた。今日は『大山街道ふるさと館』で上映するという。見たいなと思っていたので出かけた。

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映画『月あかりの下で』は、『ある定時制高校の記憶』と副題にあるように、もうなくなってしまった埼玉県浦和商業高等学校定時制のドキュメンタリーだ。演出・撮影・監督が太田直子氏。「高校の非常勤講師、書籍編集などの仕事を経て記録映像制作の仕事に携わる」と紹介が書かれていた。

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 映像は2002年から2006年までの、定時制の入学から卒業までの4年間の記録。登場する子どもたち・生徒たちに、卒業させていった私の子どもたちが重なる。みんな元気にしているだろうか。

 映画の中に登場する生徒たちの一人ひとりは、不登校や非行、学ぶことを拒絶した子どもたち。語ることを拒むような深い傷や人間不信、自己を否定するような思いが流れている。何かをさぐるように、また時には感情の赴くままにその日を生きる。教師たちはこの子たちを、まず居場所として受け止め、支えていこうとする。教室に教員室に生徒たちがたむろするのだが、彼らは少しずつ学校を自らの心の中に受け止めていく。凄いなと思う。

 映像は、4年間の日々をくまなく写しているわけではない。その背後にある彼らの苦闘と生き様、そして、それと向かい合い、人生をかけて生徒に語りかけ、生きてきた教師たちの困難な日々を思う。

 そのすべての日々が、夜の学校の出来事。月あかりの下で、少しずつ彼らの内部に何かが生まれ、小さな希望へとつながっていく。