驚くような出会い
授業はないけれど生活指導論のレポート未提出者の最終締め切り日で、都留に行った。研究室にいるとゼミ生が何人かやってきて、卒論発表会の準備に取り掛かっている。
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昼過ぎ、私は来期の授業に使用する教科書や参考図書について、生協からの問い合わせに答えるため報告に行った。スタッフの方が、もうこの日の営業を終えたのか店のシャッターを下ろしている。
私が、提出書類を見せると「事務室の方へ行ってください」と別のドアを示した。
小さな部屋に入る。と、一人の女子学生がカウンターを挟んで、もう一人のスタッフの方と話している。何やら、女子学生の口から『山﨑先生』という言葉がもれている。「あれ…」と、思わず私が耳を傾けると、女子学生が私を見つけて眼を丸くした。
「あっ、山﨑先生。いま先生の本を買いたくて、生協の人に尋ねていたのです」
びっくりした。まさかこんな場面に出くわすなんて。
「何という本を探しているの」「あの、『教室の希望…』っていう」「ああ、『希望を生みだす教室』ですね。それだったら私の部屋にあるから、いらっしゃい」
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「あなた、お名前は?」「Sと言います」
「ああ、Sさん。あなたの名前は知っていますよ。前期の臨床教育学の授業を取っていましたね」
「はい、実はわたし、4月から先生のゼミに入りたいと思っています。それで今から先生の本を読んでおこうと思ったのです」
「おやおや、それは嬉しいけれど…。でもね、ゼミ生の決定はまだなんだ。これから、どうなるかわからないんですよ」
申し訳ないような気持ちになりながら研究室に向かった。それからSさんは、2冊の私の本を購入していった。彼女の言った言葉が面白い。
「今日ここでお会いするなんて、何だか運命的な出会いでした」
私も言った。
「そうだよね。今日は、ぼく、授業日じゃないんだ。たまたま、来てみたの。そして、ふと思いついて生協に行ったのね。そしたらあなたに出会った。こんなことってあるんだなあ!」
Sさん、4月から一緒にゼミで学ぶことができたらいいね。