教室詩集 空のこしかけ

 見上げると 空へとどくような気がした

 あののぼり棒の上へ腰をおろしたら

 青い空にさわれるだろうな

       ※

 地上数メートルのぼくの椅子

 空のこしかけ

 ぼくの下はからっぽのがらんどうの海

 見えない風がぼくの足にからみついて走りぬけていく

       ※

 ぼくはこぶしを握りしめるように鉄の棒をつかむ

 ここは高い木の枝

 ぼくの体はいつしか熱い固まりになって燃えている

       ※

 だれかがぼくを呼んだ

 眠りから覚めるその時のように

 地上から発せられたその声は

 揺れるぼくの足の下あたりで渦をまき

 キラキラと輝いて散った

 どこか遠いできごと

       ※

 健や太一や誠がラケットベースをしている

 てんてんと転がる球

 女の子を乗せて走る一輪車

 ホースから流れ出る水

 みんな一枚の絵の中にある

       ※

 雲が少し形を変えた

 空がかすかに破れるような音がして青い空を見る

 青色がにじみ出している

 光が走っていった

 ぼくの過去があのあたりに詰められてそっとしまわれたみたいだ

 明日はいいことがあるよ―

 風が光のつぶやきをぼくに伝えてくれた


    (『なぜ小学生が“荒れる”のか』太郎次郎社に発表したもの)