印刷室で

 大学の中心にある事務塔の3階に印刷室がある。

 授業に使うレジメや資料は、ここで印刷する。部屋にはいつもMさんがいて機械の不備やコピーの仕方などでわからないことがあると対応してくれる。何度か助けていただいた。

ときどき、この部屋に学生が印刷にくる。教授に頼まれたようだ。先週もそうであった。一人の男子学生が何やら授業案をたくさん印刷している。わたしは、その隣で印刷を始めた。

             ※

印刷室は、4・5人がいて込み合っていた。

ふと男子学生が私の方を見て言った。

「山﨑先生、ぼくは先生の授業を受けています。いつも、いろいろと教えていただきありがとうございます」

 驚いた。それから学生の顔を見た。

「君はぼくの『生活指導論』に出ているのですね」

「はい。いつも面白く聞いています」

「お名前を教えて」「Kと言います」

「ああ、そんなんだ。授業も残すところわずかとなってしまったね。でも宜しく」

「先生、ぼくは教採に受かりまして4月からB県の中学校で教師となります」

「それは、おめでとう。焦らずに楽しくやればいいよ。頑張れ」

 印刷室だけれど、つい大きな声を出してK君と握手をした。

              ※

 5限の授業後の小さな感想用紙に彼の手紙が書かれていた。

『今日、印刷室でお会いしたKです。先生のあたたかい言葉をいただいて、うれしかったです。現場に出て困難にぶつかっても、先生の授業で教わったこと、先生から掛けていただいた言葉を思い出して頑張っていこうと思います。いつもためになる話をして下さりありがとうございます。わがままを言えば、先生にもう少し早くお会いしたかったです』と。

 K君、素敵なお手紙をありがとう。君のような学生がいて、こちらがとても勇気づけられました。K君の4月からの活躍を楽しみにしています。