推理小説

 アメリカの推理小説を読み出した。昨年のジョン・ハードは面白かったな。今回も500ページを越える本だ。こだわって読むというより淡々と文字を追う。ふだん眠っていた頭の中の別の部分が、眠りから覚めて、生きる風景が変わっていく。この感覚が楽しい。

 それでも、登場人物の名前がときどきわからなくなって、人物紹介のページを繰る。いや、しばしば! 少し注意深さを忘れると、1ページ分を読み飛ばしていて、ふと立ち止まる。「今読んだところには何が書いてあったっけ…」。だらしのない読み手だ。それでも、本を投げ出そうとは思わない。書かれている文章や人間に魅力があるのだろう。

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 冬休みが明けてこの1月は、もっと自由で時間が山ほどあると思っていた。とんでもない。しなければならないことが次々に生まれて、深く息をしないと追い込まれる感じ。だから推理小説を読む。バカだな。そんな閑があったら仕事をすればいいのだ。

 持ち帰った卒論の読み。180枚の感想を読む、対話ノートへの返事、それから十数人への手紙、書かなければならない原稿がいくつか! そして、読むことを約束していたいくつかの論文や雑誌の原稿。なんだか全部後回しにしている。

 少し仕事をしていて「付箋紙」がないのに気づいた。それでうれしくて、いそいそと町へ出る。来週の授業のためのコピーをとり、文房具屋さんとつながっている本屋さんに出かけた。

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 帰ってきて郵便受けを開けると、成人式実行委員のIさんからの手紙が入っていた。式典から帰ってすぐ、私はIさんにお礼の手紙と写真を送っていた。今度はそのまたお礼の手紙。便箋3枚にびっしりと、実行委員会での仕事ぶりや今大学生として生きる日々のことが丁寧に書かれていた。心暖まる手紙だ。ありがとう。読んでいたら元気になりました。