仲間たちの生き方に励まされる

 法政大学の門をくぐると、後ろから「山﨑さん!」と呼ぶ声。振り返ると京都の吉益さんが歩いてくる。久しぶりだ。うれしい。

「京都からいらっしゃったのでしょう。朝早く家を出て!」

 朝から教育科学研究会の常任委員会があった。

 午前の話し合いを終えた後、お昼をMさんと3人で食べる。市ヶ谷のカレー屋さんで。Mさんが言う。

「京都のカレーは、おいしいだろうねぇ」

 この言い方が面白い。ラッキョウを皿に移して食べる。吉益さんは午後から用事があって、東京駅に帰っていった。

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 午後の討論の途中、品川で仲間の会が予定されていたので席を立つ。さあ、品川の蔵という店に行かねばならない。5時集合。間に合うか。駅員さんに聞いて南北線に飛び乗った。大岡山で乗り換えて5時10分、下神明着。会場へと急ぐ。

「山﨑さんが退職したから飲み会をやろうよ」

都教組大田支部の書記長、森さんから声をかけられていた。

「数人で集まって飲むのはいいよ。退職の会というのは嫌だ」

 役職についていたからって特別なことをするのを私は好まない。

 人間はみな平等だもの。当時それぞれがみんな支えあって頑張っていたのだ。特別誰かが偉いわけではない。

「わかった。でもね、当時の同窓会をやろうという話も出てるの。ぼくと桜井さんと安田さんで企画するから」

「ぼくの会でないならいいよ」

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 ガラス戸を開けると『蔵』の店内が見えた。おやっ、なんだかたくさんの人たちがいる!ドキリとして中をのぞく。

 店内に入って、思わず声を上げた。なんと30人近い仲間がいる。あの人もこの人も!お世話になった方ばかりだ。体育同士会の吉澤君もいる。

20年~十数年前だろうか。共に子どもと教育を守り、人間が大切にされる学校をつくろうと努力しあった仲間たち。今もその先頭に立つ仲間たちも!

 会が始まって参加者の一人ひとりが近況報告をしてくれた。そのお話が胸を打つ。一人ひとりが、かけがえのない人間的な生き方をしているのだ。品川は上からの「教育改革」で有名な所だ。しかし、ここに集まる仲間たちの顔は明るい。凄いことだと思った。

 狛江市から品川に初めて来て、右も左もわからないこの新参者をみんなが温かく迎え入れてくれた。この仲間たちの暖かさを思って深く感謝した。