富士が光る
星が突然消えた
闇を切り裂き光の帯が走る
あれは水平線だ
群青色の闇の中に
紫の影、巨大なシルエット
富士だ、暁の富士だ
夜明けの光が増す
富士は少女のように頬を染める
海が広がる 海は色づく
空が広がる 空は虹色に輝く
宇宙の誕生のような新年の夜明け
富士は 語りかける
とどまることのない変化の中で
ただ“在る”ということ
命が輝くということ
ぼくの目の前の大きな木々も
高い梢から鋭く飛び立つ鳥たちも
その軌跡も
まだ眠りの中にある町も人も
静かな この海も空も
カタリとはまるような絵の中で
つながることさえ知らない必然の中で
この一瞬のときを生き抜く
美しい存在であることを
※
新年の夜明けをぼくは富士をみながら迎えた。豪雪と寒気に襲われた日本列島だが、東海や関東地方は申し訳ないような美しい夜明けを迎えた。刻々と姿を変える富士の美しさ。
袋井に帰った夜は山の中で星空を見た。カシオペアがオリオン座が小さな剣の三ツ星までくっきりと見えた。