青い空

 マンションの前の木々の枝がバサリと切り落とされた。八重桜の枝だ。植木屋さんの剪定とはいえ冬を迎える裸の幹が痛々しい。

 大学の坂道の銀杏は、すっかり葉を落とし、逆さ箒のように弓なりの枝を空に伸ばしている。その隙間から遠い山の稜線が見える。赤レンガ広場の上段に立つ。白い町並みの向こうにいくつもの山並みが重なる。都留の大学の四季を絵葉書にしたら売れるかもしれない。本当はスケッチをしたいのだけれど…。

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 電車の中では『鎖のない船』(加賀乙彦・作)を読み続けていた。日米開戦にいたる特命大使となった外交官来島平三郎とその妻アリス(アメリカ人)との間に生まれた健(日本陸軍飛行兵)の戦争と向かい合う日々がえがかれている。

都留の青空を見上げていたら、一瞬、時が入れ替わり、1944年。健の乗った戦闘機が白い雲をかすめながら西の空へと飛び去って行った。幻影。

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今日は学生との対話を終えて5時17分の電車に乗る。雨。お昼を食べる時間がなかったので大月の駅でうどんを食べる。ほっと一息。店を出ると向こうから知った影。佐藤隆先生だ。

「珍しい。早い帰りですね」

「うん、今週は忙しいんだ」

「そういえば、ビールがありませんね。これも珍しい」

「今日は車なんです」

こんなこともあるのかとびっくり。

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家に帰ると京都の吉益さんから『関西教科研』のお知らせのお手紙が送られていた。もしかしたら一人で100通くらい、いやもっとかもしれない、宛名シールをはり投函しているのではないか。大変だろうなと思った。