風呂焚き

 夕日はとうに沈んでいた

 風呂焚きだ、風呂焚きだ!

 ぼくは、友だちとさよならをして

村道を走る

凍える手を強く振りながら 風を切って走る

 暗闇が足元にからみつく

 胸がキュンとちぢまる

 黒い塊となった竹やぶを 息を止めて駆け抜ける

 「ただいま!」

 かまどには、ばあちゃんが座っていた

 赤い火が燃えている

釜が湯気を立てる

ぼくは、風呂場に急ぐ

新聞紙をまるめて 落ち葉を乗せて

乾いた小枝をポキリと折って

マッチを擦る

パチパチと音を立てて燃える火

ぼくの両手が赤い

大きな薪を投げ込む

火は笑いながら薪を包む

もう安心だ

ぼくは焚口に筵を敷いて座る

冷えた両膝を抱え 体をゆする

火は、暗闇の中で踊りながら語りだす

静かな時間が流れていく

ぼくの一日が 夢の世界に閉じ込められる