H君の目に涙
教育実習は学生たちの心にさまざまな感動と深い思いを残す。責任ある立場で子どもたちの前に立ち、「先生!」と呼ばれながら日々を生きる。こそばゆいような、誇らしいような…。
ゼミで報告会をもったのだけれど、どの学生も語りだすと30分を越えて話し続ける。例え教師の道に進まなくてもこの経験は人生の宝物になるだろう。
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H君は、K県の故郷に帰って2年生を担当。教室は、困難な子どもたちがいっぱい。何が起こるかわからない。
彼は書く。「校外学習でウンチのおもらし」「授業公開前に吐いてしまう」子、「毎日必ずケンカが起こり誰かが泣く」「先生!!」の日々…。
そんな中で、彼はパニックを起こすB君と丁寧につきあっていく。固まったり、暴言を吐いたり、べたぁと甘えたりしてくる…。他にもいろいろな課題を抱えた子がいる教室。しかし、H君の目はあたたかい。子どもたちを愛おしく見つめていく。
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別れの日が来たとき、どうしても彼は伝えたい言葉があった。1組の子、2組の子たち全員に小さなプレゼントを手渡す。それは、折り紙の中に切り取ったハートがしまわれていて、こんな言葉が書き付けられている。
―『みんな みんな たいせつな いのち 生まれて きてくれて ありがとう』
サヨナラをした後、教室を出ようとすると扉の前にB君がいた。
彼は、泣きながらH君に言った。
「生きていてよかった!! 先生も、オレも」
小さな7歳か8歳の子が、まるごとの自分をかけて、こんな言葉を叫ぶのだ。自己の存在が光を帯び、ああそこに、共に過ごしてくれたH君も輝いているのだ。
こんな小さな小さなドラマの中で、人は生き希望を抱きつながっていく。