吉益さんの本

 京都の友人、吉益敏文さんの本(1995年・かもがわ出版)を読んだ。日曜版の連載では読んでいたけれど、本にまとまっていたものは読んでいなかった。

研究室の棚に見つけて「ヤッター」と思わずつぶやきながら本を開く。都留の大学に行っている二日間、授業の合間に夢中で読んだ。

本の題名は『子ども、親、教師 すてきなハーモニー』

どのページも瑞々しい子ども観であふれている。若い教師たちが読んだらいいのになと思った。

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心に残るところはいっぱいあるけれど、ちょうど授業でG県K市の6年生の女児自殺事件を扱っていたので、吉益さんのいじめへの対応の場面が胸にしみこんできた。涙がこみあげてくる。

娘からいじめの告白を受けた『両親』が、いじめを続けている男の子たちの家にお話にいく。それは、抗議というよりも人間を大切にする誠実な対話を求めて、両親の悲しみやわが娘の苦しみを語りながら。『両親』のお話は、いじめをする男の子たちの家族の心をゆさぶる。そして、いじめは少しずつ止んでいくのだ。ああ、こういう親の対応もあったのか!

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G県K市の事件について、私は学生たちと語り合った。概要を説明しグループの討論をした後、全体で発言をしてもらった。180人の学生たちがシンと耳をすまし聴いてくれる。そして私の意見を伝えながら考えあう。

授業を終えて、私は、彼らの感想用紙の一枚一枚を読む。

来週の授業で、吉益さんのこの本のいじめへの対応を紹介したいと思った。

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本は、吉益さんの失敗話もちりばめられている。過ちをこんな封に書けるっていいなあと思う。子育ての勇気と教師である喜びをいっぱいもらえる本だ。