秋の風

 義父の介護リハビリ施設を訪ねる。マンションの玄関を出ると落ち葉が足元にからみついてきた。強い風に吹かれて転がっていく。梢では、木々の葉がカサカサと音を立てる。ああ、秋の音だ。

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 新横浜から『ひかり』に乗った。『こだま』よりずっと早い。静岡は『ひかり』が停車してくれる。45分くらいで着いてしまった。改札口を出て、すこし地下街を歩いた。

 昼食をとるサラリーマンの多い店によってハンバーグランチを頼む。880円。おいしかった。ごはんが多いので食べきれない。

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 再び電車に乗って『東静岡』へ。義父の入所している施設へと歩いた。広々とした駅前広場に強い風が吹きつける。ふと、故郷遠州のからっ風を思い出した。しかし、この風は、駿河湾を渡ってくるんだ…。

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 義父は寝ていた。それから目をあけてあれこれおしゃべりした。2時間近く。今日は特別なことはしなくていい。

「暮れに袋井に帰るのは大変だから、お正月は近くのホテルに泊まろう」

そんな話をする。義父の部屋からカーテン越しに、高い山が見える。立ち上がってのぞく。「富士山だよ」と義父。ああ、ここから見える富士は大きいんだ。

 帰りも『ひかり』にした。混んでいる。加賀乙彦を読んでいたら、いつのまにか眠っていた。『新横浜』のアナウンスを聞いてあわてて下車。帰宅、5時を少し過ぎて…。鮮やかな三日月が空に浮かんでいた。