高尾山ハイキング(2)

 高尾山の稲荷山コースは、最後の一登りがきつい。急な丸太の階段が100段近く続く。若者たちはこの階段を、青空と紅葉に向かって一息に登って行った。私は、小休止。

 最後の一段を登ると、みんなが歓声を上げて待ち受けてくれた。そう、ホームランを打った打者をベンチで迎えるように…。

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 山頂のすぐ下で、村人が『山芋』や『アケビ』を並べて売っていた。T君が紫色のアケビに魅せられた。

「100円なんだよね、気になるなあ。食べてみたい」

 そわそわ。「いいよ、買っておいでよ」とみんな。ついにT君は買った。両わきからみんな、ワイワイ手を出してそっとアケビに触る。

「へえ、ちょっと柔らかくて生きているみたい!」

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 それから暫く歩くと薬王院に出た。朱色の建物が青空に輝いてまるで絵葉書みたいだ。

「おみくじ、やろうかな」とみんな。

「私は、やめとく…。だって、こだわっちゃうんだもの…」

 おみくじを引いた何人かがそっと開く。緊張!

 結果は、…秘密。

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 薬王院の階段を降りていくと、下の方から「ブォー」という音が響く。何事かと思ったら、法衣をまとった坊さんたちが数人列をなして法螺貝を吹きながら歩いていった。いいものに出会った。

 女坂、蛸杉を過ぎて歩く。かすみ台展望台あたりで山々の連なりを見た。それから、リフトへ。

 Sさんが、何やら細かくちぎっている。

「はい、これ」「もしかして…、籤でしょう」

「リフトに乗るペアを決めるのです」

「一人が余るね。一人ぼっちで乗るんだ」

 ちょっとドキドキしながら私も仲間入りして籤を引いた。一人ぼっちの大当たりはMさん。

 リフトの順番がきて私はIさんと先頭で乗る。後ろでキャアキャア声がする。それはT君の声。ペアになったSさんがガタンガタンと揺らすらしい。T君は恐怖で叫び声を出しているみたい…。

 ところが、ここで事件。一人で乗っていたMさんが、後輩のGさんの手袋をポロリと下に落としてしまった。嘘のような本当の話。

 もうあきらめるかと思ったら、リフトの管理人に話して、取ってきてもらった。手袋は20分くらいして、小さな箱に乗って麓までやってきたと言う。面白いね。手袋の旅だ…。

 4時、北野の駅で別れる。「また、来年もやろう」なんて言いながら。N君との帰り道、京王線の窓から夕暮れの中の富士を見た。