高尾山ハイキング(1)

 京王線の終点、高尾山口駅に9時50分に着いた。集合は10時。改札口付近は、リュックを背負う人たちでいっぱい。深まる秋を楽しもうとやってきた人たちだ。

 私はすぐ、弁当のことが心配になって駅舎にある天狗の顔の横の売店に急いだ。思わず声をあげた。

「わあ、たくさんある。それに、弁当の種類が増えている!」

 早速、おにぎり2個入りパックを買って、人ごみを縫うようにして広場の方へ歩いた。と、突然、黄色い声が辺りに響き渡る。

「先生―!」

 顔をあげると、向こうからゼミ生のMさん、Gさん、Iさん、Sさんの4人が、手を振りながら駆けてくる。

「やあ、君たち来ていたんだね。会えてよかった。凄い人でしょう」

 駅前広場でワイワイやっていると、N君が姿を見せた。これで5人。それから15分まってT君が合流。

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 今日は、ゼミ生の自由参加の高尾山ハイキング。3・4年生の親睦もかねて…。私は、秋の高尾山を歩きたかった。

 集合写真をとって、さあ出発。山の入り口で、見事に染まった紅葉や色づいた広葉樹が迎えてくれた。

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 高尾山では一番体力のいる稲荷山コースを選択した。初めから階段が何段も続き、あっというまに体がほかほかと温まる。膝のあたりに快い疲れがたまっていく。

 清滝コースを歩くつもりだったけれど、若者たちの体力があまりそうだし、人ごみを避けて歩くほうがいいかな、稲荷山展望台も見せてあげたい―、そんな思いで予定のコースを変えた。心配は、最近ほとんど歩いていない自分のことだけ…。でも、大丈夫だった。

 展望台に着くと、みんな歓声をあげた。秋の空がグンと広がって、青空が姿をあらわし始めていた。高尾山頂上に着くと、そこは、あふれる人、人、人。

 しかし、息を飲むような紅葉だ。遠くに富士。言葉もない。

「あそこで食べましょう!」

そう言って見つけてくれた場所は、紅葉の木の下。赤、黄色、橙、オレンジ…、それらが重なり合って光に映える。微妙な色となり頭上に広がる。

「これ、食べてください」

 おにぎり、から揚げ、海老の揚げ物、きのこのバター炒め、卵焼き…。本当にピクニックだ。敷物を敷いて輪になって食べた。