S先生の言葉

 M県で教師をするS先生からお便りをいただいた。実践のレポートを添えて…。私は4月から現場の教師ではなくなった。こうした教室の記録をいただくと、心が躍りとてもうれしくなる。

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 S先生は飛び込みの6年生の担任。子どもと心をつなぐのは、ただでさえ大変なのに、体育主任まで引き受けて、組合の重要な仕事も進めている。

 クラスに嫌なことがあると固まってしまうA子さんがいる。その子が運動会の練習のときどこかに姿を消してしまった。S先生が校内を探すとA子は女子更衣室にいた。でも、何も話してくれない。練習にも参加しない。このA子さんが1時間半を経て“復活”するまでを先生の思いと細やかな対応とが書かれている。

 対応の中で、A子とクラスの仲間たちをつなぎながら育てていこうとしている姿が素敵だ。

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 こうした教室の“小さな事件”が起きると、こんなことが起きないクラスがいいな…と普通は思ってしまう。しかし、S先生は違う。

『こういうことが起きると正直困ります。でも、どこか嬉しくなっているボクがあります』と。その理由は?

S先生は続けます。

『昨年度まで教育事務所や教育委員会、校長などの大人が相手だったのでこうした問題に出会うことがありませんでした。しかし、こうした問題に出会うと、ボクは今成長途中の子どもたちと一緒に時を過ごしていることを実感できて、幸せな気持ちになれるのです』

『…確かに疲れるのですが、子どもが問題を起こすには必ず理由があります』そして、その理由は『そんなに簡単に理解できるものじゃないし、理解できたとしてもすぐには変われないこともいっぱいあると思うのです…』と。

S先生は、こう語りながら、様々な生き辛さを抱え今を生きる子どもたちと、共に過ごすことを大切にしているのだ。自分の目で、自分の感覚で、マニュアルに頼らず、子どもを批評家の目で切り捨てず、具体的に関わりながら子どもとつながり未来への一歩を刻もうとしているのだ。すごいなと思う。

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S先生のレポートを読みながら、同じような立場で頑張っている東京の中学校の体育教師M先生や数学教師Si先生のことも思い出した。