秋の雨
雨がふるといい
蝉を鳴かせ 夏の命をうけつぐ
木々をぬらして
※
雨がふるといい
土くれのはしから 月夜を見つめる
草むらの虫たちに とどくまで
※
野球帽をかぶった少年の 日に焼けた肌が
夢に抱かれるように
雨がふるといい
※
ほのかな夏の思い出に
美しい色づけをしてくれるような
雨がふるといい
※
夏がやさしく秋にかわる日
木々は空を見あげた
ジャングルジムに腰掛けて母さんに手をふる
女の子のほおに
雨粒が三つ
※昨日は、義父の入所している施設へ行った。うとうとと眠りながら、時おり唇が動く。あわてて耳を近づける。
「M村のお母さんは元気か」。私は、ゆっくりと頷き答える。「母はお見舞いに来たいと言っていたのですが…。無理をするなと…。この間、母の生まれ故郷に行ってきました」
「何といく村だっけ」「二俣の光明村だったと思いますが」「そうだったな。…」
それから、節々の痛みを訴える。
※
町を歩いていると、学校帰りの子どもたちと出会った。一年生だろう。白いヘルメットをかぶった女の子が、歩道を勢いよく駆けて行った。何かうれしいことが学校であったのかもしれない。