星空の散策

 ゼミの合宿。夕食のバーベキューは、肉がいっぱい。あふれんばかりにある。秋刀魚、サザエ、ホタテ、じゃがいも!それから、真っ白なお米のおにぎりが、それも一人2個ずつ。

「えっ、これ食べきれるのかなあ」

 座席は、M君が割りばしでくじ引きを作って決めた。乾杯だ。


 もう一人のM君は、今日は体調を崩して不参加。残念。毎回ゼミに参加してくれていた院生のYさん、今回は4年生の卒論のテーマづくりの最初の段階、無理をかけたくなくてお誘いしなかった。ごめんなさい。


 一つおいた向こうの席で、消防団の若い一団が激しく飲んで叫んでいる。写真を一枚お願いしたら、気持ちよく撮ってくれた。ところが仲間の何人かが、どさくさにまぎれて私たちの席に飛び込んできた。ガチャ! 一緒に写る。これも楽しい。

 さて、肉はどうなったか。さすがにみんな食べ疲れて次々にT君やM君のもとへ。山盛りだ。

「T君、無理するなよ」「はい」

 一枚、また一枚、あれあれ、細いからだのT君が肉の山を崩していく。見事にたいらげた。

              ※

「散歩をしよう」

と、誰かが言い出した。車道を少し歩き、富士の裾野を登るように暗いわき道をみんなで歩いた。外灯は、ぼんやりと白い家壁と夜道を映し出す。足元はおぼつかない。

「見て、富士に赤い火が灯っている」

 富士の8合目くらいから裾野にむかって赤い火が続いている。

「登山道を登っているのかなあ」

 翌日、宿の人に尋ねると山小屋の明かりとのことだった。

「星がきれいだね」

「都留もよく見えるけど、何だかここは星が近いみたい」

「ねえ、見て。少し白いものが空に流れてる。天の川じゃない」

「あっ、そうだね。ほら、カシオペアが見える。北極星も。上を見てごらん。夏の大三角形だ。ベガとアルタイルとデネブだね」

「向こうに強く光ってる星があるなあ。あれは何だろう」

「あれは、惑星だね。火星じゃないかなあ」

「教師になってから、星を見て説明できたらカッコイイね」とT君。

               ※

 道はますます暗くなる。と、先頭を歩いていた二人が「キャーッ」と言って体を寄せ合い、震えながら仲間の輪に飛び込んできた。暗闇が深い。竹やぶも杉林も闇に溶け込んでいる。妖怪たちの行き交う場所だ。いいなあ、と思った。

 それから風呂に入って部屋に集まり二次会。トランプでキャーキャーやりながら…。わたしは、12時になったところで先に休む。若者たちは、まだまだ遅くまで遊んでいたみたい。明日は、みんなを起こすという悪役をやらねばならない。