釧路動物園

 障害を持つアムールトラのココアに会いに行った。釧路に着いた第一日目のこと。うだるような暑さの中、空港からまっすぐバスで行った。

 小さな動物園で、入り口は授業に使った写真とそっくりだ。当たり前だよね、これが本物なんだから!

 猛獣舎を訪れると最初に出会ったのが双子のトラ、ココアとタイガの母親チョコ。それから、ゆるい坂を上る。いたいた!ココアだ。大きい。もう母親を越えているのではないか。檻に体を押し付けて寝転んでいる。

「おい、ココア!」と呼ぶ。

 ココアは、顔をあげた。写真を撮る。ゆっくりとあたりを見回しココアは大儀そうに体を横たえた。写真のためにわざわざ体を起こしてくれたような気がした。ありがとう。

 猛獣舎の中には、子どもたちの手紙や誕生祝などが飾られていた。

「長生きしろよ!」と思った。

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 タイガは昨年の8月25日に、突然亡くなった。頚椎、脊椎、腰椎など、骨の発育が困難を抱えていたようだ。二匹のトラのことを1月の学校公開の道徳の授業で扱った。そのことは、すでにブログに書いている。そのトラとやっと会えた。

 私の道徳の授業は、こうした話題を扱うときは一時間では終わらない。事実の重みを丁寧に子どもたちと考え伝えていく。その方がずっと楽しく考えられるし、子どもたちの心を深く揺さぶり瞳も輝く。

 公開の後に続く次の授業を、校内のB先生が見に来てくれた。感想を後でいただいた。

「あの道徳の授業、『すごい』と思いました。同時に『真似は絶対にできない』と思いました。私にはない人間味あふれる姿に胸をうたれました。…。先生、やっぱりこの仕事はいいですね。人が人を教え学ぶことができるのは、この仕事でしかできません。だからこそ、自分が何たるか、自分は何で勝負できるのか、自分にしかできない何かを、これから絶対に見つけようと思います…。」

 教育の困難を打ち破るような、強いメッセージがあふれている。うれしい。学生たちにも言っている。

「あのね、君たちには今をはみ出す力がある。教師になったら、少しぐらい生意気がいい。あまり小さくまとまるなよ…」と。