義父の家、そして故郷へ

 14日、リハビリ施設に入所している90歳の義父を訪ね、介護タクシーに乗せた。「お盆には、家に帰ろう」と約束してあった。玄関から車椅子で入り畳に体を持ち上げる。義父は、立ちあがって自分を支えることができない。共同作業だ。重い。

「経をあげたい…」

 押したり引いたりしながら義父を仏壇の前に連れて行き、小さな椅子に座らせた。体はいうことを利かない、しかし、話すことや物覚えはとてもしっかりしていて舌を巻く。矍鑠たる読経の声。すごい!と思う。

突然「おしっこがしたい…」と言った。二度世話をする。オムツが捩れると義父は悲鳴をあげる。お尻も痛いと繰り返す。昼を食べ、座椅子を倒すと少し楽になったのか寝息を立てた。

 3時きっかりに介護タクシーが迎えに来てくれた。何度も頼むから運転手がわかっていて手伝ってくれる。

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 午後の5時を過ぎて、私の実家、故郷のM村へ行く。88歳の母がいる。盆と正月は決まって兄弟が妻や子、孫たちを連れて集まる。近況を語り合って飲むだけだけれど…。集まると必ず喧々諤々と政治や教育論議が始まる。「何なんだ、この家族は!」と娘や甥っ子たちが言う。でもちゃんと最後は収まって適当なところで星をみて終わる。「まあ、お互い健康でいられたんだから…」

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 今回は、甥っ子の小さな娘がいて田んぼ道を二人で散歩した。畑を見て「あっ、田んぼ!」と言う。川まで歩いて実り始めた稲の穂を見せながら、一粒実をとり籾殻をむいた。硬い小さな米粒がポトリと可愛い手に落ちる。

「これが白いお米になってごはんになるんだよ」