岬

 緑の草原が切れる

海に落ちる断崖

 突き出した黒い岩陰

カモメが一羽 


のびあがり、とどまり、羽裏をみせて帰っていく

白い軌跡は意思のある羽ばたき

 昨夜の星たちが小さな紫の花を落としていった

 岬は 海に抱かれることを

 海は 陸にかけあがることを

 幾度も願っていた

 激しい対話もあった

 語り合う夜もあった

 風は時おり二人に子守唄をきかせてやった

 海は眠り 岬は目を閉じた

 旅人が岬の端に立ち海を見つめていた

 宇宙がそっと旅人の心の中に忍び込んでいた

※美しい岬の端っこに番小屋のような店が二つ。細長い赤い旗が揺れていた。「今朝は漁をしてきたのだよ」と私よりも若いだろう白髪の漁師が言った。肌はつやつやと輝いていた。