小さなスケッチブックを抱えて

 北海道の釧路へ行った。8月4日~6日まで研究会に出席した。教師や教育の現状に胸を痛めながら、一方で、若い仲間たちの報告に胸を躍らせ深い感動を味わった。夜は、みんなで集まってよく飲んだ。

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 釧路の町は太平洋を臨む港町。北前通りと呼ぶ大きな通りが南に向かってのびている。幣舞(ぬさまい)橋という美しい橋があって、その向こうに小高い丘があり、海や町を見下ろすように『まなぽっと幣舞』会館がある。山田洋次監督と田中孝彦教科研委員長のお話は、そこでおこなわれた。

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 港に続く岸壁に漁船が幾艘か並んでいた。『ぬさまいばし』を渡り人気のいない岸壁を海に向かって歩いた。『ヌウ?』という大きな建物が川をはさんで船の向こうに見える。そこでは、土産屋がいっぱい店を並べている。建物の前に白と青の縦じまのテントがあって、夏の間の『炉辺焼き屋』になっている。

 8月3日の夜、みんなに出会ったら、二人の若い教師が大きな紙袋をぶらさげて幸せそうに笑っている。

「買い物したんですよ~。あそこで!」

 夏休みの幸せがあふれ出しているようで笑顔が輝く。

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 建物の裏手の雑草の陰にかばんを置いて、小さなスケッチブックを取り出した。海や建物が広大すぎて、手に負えない。それでも少しずつ描き、時間が過ぎていくのを楽しんだ。

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 北前通りの真ん中に、1階が古本屋で2階がレストランの心落ち着く店があった。一日目、今泉博さんとこの店で昼食を取った。この日も一人でランチをとる。それから1階の店内を歩いた。

 三木卓の『鎌倉日記Ⅱ』があって購入しようとしたが、思いとどまる。確かこれは家にあって読んでいるはずなんだけど…。家に電話をして確認してもらおうかと思ったが無粋なので辞めた。買わなくて良かった。ちゃんと本棚に並んでいた。文章を読んで思い出さないなんて自分でも情けないなあと思った。