Yさん、飛び込んでくる!

「先生、レポートを今日出してもいいですか」

 29日の早朝、研究室に飛び込んできたのはGさんだ。

「セーフです! よかったね。今日までぼくがいて…」

「ごめんなさい。朝起きて気付いたのです。レポートの締め切りが昨日だったって…」

「今日は、まだこれからテストがあるの?」

「学童に行きます。それから午後の終わりにテストがあります」

 それから『古典』のテストについて質問があり、ちょっとアドバイスした。別れ際にYさんが言った。

「先生…。もうこれで2ヶ月会えません…」

「そうか。夏休みがあって9月からは教育実習だものね」

 3年生の中には10月から実習の学生もいる。すると3ヶ月も会えない。寂しくなる…。

             ※

 午後、再びGさんがやってきた。「ここで勉強していいよ」と話していたから…。そのとき、ドアが勢いよく開いてYさんが飛び込んできた。「やっぱここにいたね、Gちゃん」

「あれ、Sちゃんもテスト?」

 二人で盛り上がっている。それからSさんが叫んだ。

「先生、『5年3組リョウタ組』読みました! 面白かったです。最高でした。わたしみんなに紹介しています!本の帯にね、現代版『ぼっちゃん』って書いてありました。Gも読みなよ!」

「頼りない新任教師のリョウタが、おたおたしながら少しずつ教師の道を歩んでいくんだよね。いろいろ失敗を繰り返しながら…。でもちゃんと彼のいいところがあってね」

「主人公が、染谷じゃないところがいいですよね」

 Sさんは、本が大好きだ。本の話をするって楽しい。