瞳、輝いて
「先生、この間お借りした本、読み終わりました」
「凄いな。よく読んだね。胸が痛くならなかった?!」
ゼミ室に置いておいた柳美里さんの『ファミリーシークレット』。ゼミの時間に紹介したら、3年生のHさんが借りて行った。
「虐待のこと、知りたいです」
集中して読んだのだろう。うれしくなる。Hさんの瞳が輝いていた。読んだ本を語る姿がキラキラしている。
「小学生時代、本が大好きでしたから…」
大学生になって再び本に夢中になってほしい。学生時代の一番大切なことの一つだから。
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ゼミの時間、読んでいる本の紹介をしあう。
Y君は、『友だち地獄』(土井隆義著)を紹介してくれた。私は、土井氏の『「個性」を煽られる子どもたち』(岩波ブックレット)を読んでいたが、こちらは読んでいなかった。さっそく買い求めて読んだ。おもしろかった。
文学の話もでる。
今日は、4年生のMさんが『臨床とことば』(河合、鷲田著)を借りて行った。しかし、ゼミ室の私の本棚は、空っぽ。学生たちに申し訳なく思っている。
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臨床教育学の感想アンケートに、「先生『オール1の落ちこぼれ、教師になる』(宮本延春著・角川)読みましたか。とても感動しました。是非、読んでください」と書いてある一枚があった。
宮本氏のことは、どこかで知っていたが本は読んでいなかった。買い求めて読む。いじめにあい学ぶ意欲もまったくなかった宮本氏が、アインシュタインのビデオを見てから劇的に変わっていく。豊川高校の教師たちの、宮本氏を援助する姿にも心打たれた。
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大学時代は、悩みも大きいけれど、ゆるやかな時間の流れる日々が続く。
みんな、その時間を大切に生きてほしい。遊ぶこと、おしゃべりすること、部活、そしてアルバイト。生きていくために必要なアルバイトもあるだろう。だが、週に1・2冊は必ず本を読み続ける学生であってほしい。
若い教師もまた、困難な日々の中だろうが、文学や教育書、そして様々な専門書を読んでほしい。今を生きる多忙な時間をそっと脇において、自分の時間を生きることができるから…。そういうわたし自身、そんなに本を読むことができなかったけれど。